第84期名人戦開幕――糸谷哲郎八段の挑戦と第1局戦型予想|たつみくんの将棋観戦記

たつみくんです。将棋界はいよいよ新年度、明後日4/8(水)に第84期名人戦が開幕します。

■ 糸谷哲郎八段という挑戦者

第84期名人戦七番勝負に挑戦者として名乗りを上げたのは、糸谷哲郎八段です。「ダニー」の愛称で将棋ファンに親しまれる彼は、2014年に竜王を獲得した実績を持つトップ棋士。既存の定跡に縛られない独創的な力戦派スタイルと、終盤の圧倒的な破壊力が持ち味です。序盤から相手の研究を外し、自分の土俵へ引き込む指し回しは、長時間の2日制タイトル戦でこそ真価を発揮しやすい。迎え撃つ藤井名人にとって、これほど「読みにくい」相手もそうはいません。

名人戦は持ち時間が各9時間という、現行タイトル戦で最長の2日制です。1日目に封じ手が行われ、翌日その続きから再開される形式は、棋士の深い読みと体力・精神力の両方を極限まで試します。序盤から中盤・終盤にかけて数十手先を見通す超長距離の読み合いが展開されるのが名人戦の醍醐味。持ち時間が潤沢なぶん、AI超えの深い研究手が飛び交い、ファンとしては盤面に釘付けになる時間が長く続きます。

第1局は2026年4月8日(水)・9日(木)、東京都文京区のホテル椿山荘東京にて開催。前夜祭は4月7日(火)、同ホテルにて。いよいよです。

■ 第1局の戦型予想――本命は「横歩取り」

さて、おじさんの楽しみのひとつが開幕前の戦型予想です。両者のこれまでの公式戦データをもとに、第1局でどんな将棋が生まれるかを考えてみました。

結論から言えば、本命は「横歩取り」です。

両者の過去の公式戦10局を振り返ると、横歩取りが4回、角換わりが4回と拮抗していますが、注目したいのは直近の傾向です。2025年の叡王戦・銀河戦と2局連続で横歩取りが採用されており、両者ともこの戦型を最新形で深く研究していることがうかがえます。藤井名人は横歩取りを非常に得意とし、糸谷八段との対戦でもこの戦型で複数の勝利を収めています。特に先手番での横歩取り志向は顕著です。

対抗として挙げたいのが「角換わり」です。糸谷八段はもともと角換わり党として知られており、採用回数も横歩取りと並んでいます。ただ、藤井名人は角換わりでも高勝率を誇るため、糸谷八段が積極的に角換わりを選ぶ動機はやや薄いかもしれません。研究の深さで真っ向から挑むか、横歩取りで最先端の力勝負に出るか――糸谷八段の準備がどこにあるかが鍵を握ります。

大穴として「雁木」も頭の片隅に置いておきたいところ。2024年の朝日杯で一度採用されており、糸谷八段の柔軟な構想力を考えればゼロとは言い切れません。奇襲的に角道を止めてくる可能性は、力戦派らしくて十分あり得ます。

タイトル戦の第1局は準備期間が長く、最新形の研究をぶつける傾向が強いという点でも、現代将棋の最先端である横歩取りは有力です。たつみくんの最終予想は「横歩取り本命、角換わり対抗」。さて、盤上はどんな物語を紡いでくれるでしょうか。

■ 将棋ファンに生まれてよかった

王将戦の奇跡、棋王戦の逆転劇、そして名人戦の開幕。これだけのドラマが一つの年度をまたいで連続するなんて、将棋ファンでいられることの幸せをしみじみ感じます。4月8日が待ちきれません。

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