50代おじさんのたつみくん。自他ともに認めるANA派のサラリーマンである。
羽田から飛ぶことが多い仕事柄、自然とANAにお世話になる機会が多い。一昔前、出張で国内をバタバタと飛び回っていたあの頃、「せっかくこれだけ飛んでいるなら」と、いわゆるマイル修行に踏み切った。週末に那覇や新千歳を往復して、プレミアムポイントをひたすら積み上げた。おかげで無事に上級会員の資格を取得し、「JALもいいけど、自分はANAだな」と誇らしい気持ちで空港のラウンジに滑り込む、あの瞬間が好きだった。
……過去形になってしまっているのが、今の気分を物語っている。
2026年5月、ANAが国内線運賃を「リニューアル」した
これまで「バリュー」「スーパーバリュー」といった名前で親しまれてきた運賃体系が、5月から大きく様変わりした。新しい名称は3種類。「フレックス」「スタンダード」「シンプル」、以上である。
「国際線に合わせてわかりやすく整理しました」というのが公式の説明だが、利用者の立場から言わせてもらうと、「実質的な値上げとサービス縮小」を小洒落たネーミングで包んだだけに見える。
いちおう整理しておこう。「フレックス」は当日まで購入可で変更も無料、いちばん自由度が高い代わりに当然お高い。「スタンダード」は前日まで購入可で変更に手数料あり、まあ標準的なプラン。そして最安値が「シンプル」だ。
「シンプル」のどこが問題か
問題は、この「シンプル」がとんでもない制限つきだということだ。
まず最大の痛点。座席指定が搭乗24時間前まで不可、である。
「安い席だから多少の制限は仕方ない」という気持ちは、わからなくもない。LCCならそれが当たり前だ。しかしこれ、ステイタス会員であっても適用されるのだという。つまり、コツコツ修行してダイヤモンドやプラチナの資格を持っていても、「シンプル」運賃を選んだが最後、座席指定は当日まで待てということになる。家族や友人と連れ立って旅行する際に「シンプル」を選んだら、バラバラの席になる可能性が十分にある。……いやいやいや。
さらに、預け荷物は1個までに制限される(スタンダード以上は2個まで無料)。マイルの積算率も渋くなった。「安くしてやるから、その分は我慢しろ」というメッセージが透けて見える。
とどめは「国内線燃油サーチャージ」
これまで国内線の燃油コストは運賃本体に織り込まれていたのだが、今後は国際線と同様に「別途徴収」される仕組みになりそう。燃料価格が上がれば運賃とは別にサーチャージが乗ってくる。つまり、表示価格が安くても、最終的な支払い金額はその時の燃油価格次第でふくらむ、ということだ。
追い打ちをかけるように、国内線にも燃油特別付加運賃、いわゆる燃油サーチャージが導入されそうなところ。
まとめると、今回の「リニューアル」の構造はこうだ。今まで通りのサービスが欲しければ高い「スタンダード」を買え。安い「シンプル」を選ぶなら不便を我慢しろ。そのうえで燃油サーチャージも別途払え。フルサービスキャリアとしてのANAが、LCCのような「割り切り」を求めてきた格好である。
ANA派として、素直に残念だ
繰り返すが、わたくしはANA派である。特に羽田ベースで動くことの多いサラリーマンにとって、ANAはありがたい存在だった。ラウンジでコーヒーをすすりながら搭乗を待つ時間は、出張の数少ない楽しみのひとつでもあった。
だが今回ばかりは、「上級会員の資格、維持し続ける意味あるかな」と、本気で考え込んでしまった。ステイタスを持っていても、安い運賃を選んだら座席さえ選べない。それなら、上級会員であることの旨みがずいぶん薄れてしまう。
もちろん、すぐに乗り換えるとか、カードを解約するとか、そこまで大げさなことをするつもりはない。ただ、「ANAだから安心」という信頼感が、今回の改定でほんの少し揺らいだのは確かだ。
空を飛ぶことは、まだ好きだ。でも、好きな会社には、好きでいさせてほしいな、と思う。

